研究概要 |
背景)前回科研費(基盤研究(B)(2)井口昭久、林登志雄 一酸化窒素分泌制御による動脈硬化病変退縮の検討-平成9-11年、09470166)にて家兎進行動脈硬化症に対しeNOS adenovirusの遺伝子導入を試みた。部分的退縮を認めたが、機序に不明な点が多かった。 目的)eNOS, iNOSに加えエストロゲンの抗動脈硬化作用に注目し,ERα(エストロゲン受容体α)のvectorを含む、複合遺伝子療法を試みた。 方法)1)eNOS, iNOSの遺伝子導入を行った。2)ERαのadenovirus vectorを作成し検討した。3)動脈硬化家兎、糖尿病自然発症ラット、老化ラットの血管の各NOSの活性制御を遺伝子導入及び補酵素、基質供給にて行う。4)iNOSの活性化、不活性化双方の遺伝子転写制御を試みた。5)eNOS, iNOS及びERαの複合遺伝子導入を培養細胞と摘出家兎動脈硬化血管を用い行った。 結果)1)家兎進行動脈硬化症に対して濃度を変えてeNOS, iNOS及びeNOS+iNOSのadenovirusを遺伝子導入、一週間後にはeNOS群にのみ約20%の退縮効果を認めた。2)ERαのadenovirus vectorを作成し培養細胞にて確認した。ERαにより、eNOSからのNO分泌亢進、iNOSからのNO分泌減少を認めた。3)糖尿病自然発症ラットOLETF rat(28週齢)、老化ラットWister(25ヵ月齢)の大動脈を摘出しeNOS及び,iNOS遺伝子をex vivoにて導入した。血管内皮機能改善効果を認めた。4)eNOS活性制御に関しカベオラの機能を解明する目的で共焦点顕微鏡、Atomic Force顕微鏡を用いカベオラの構造変化を認めた。5)iNOSの、活性化、不活性化の遺伝子転写制御を試みた。eNOS及びiNOSのSiRNAを作成した。6)eNOS+ERαの導入により、細胞内遊離脂肪の減少を伴う退縮効果が期待された。 結論)eNOS, iNOS及びERαの複合遺伝子療法により動脈硬化症退縮が期待された。
|