研究概要 |
ラット心筋梗塞モデルにおいて,ischemic preconditioning,およびmitochondria K-ATP channel openerとしてニコランジルとジアゾキサイドを用いて30分虚血再灌流後の心筋梗塞サイズ抑制効果について検討した.いずれの操作においても心筋梗塞サイズの有意な減少を認め,mitochondria K-ATP channelの開口現象が梗塞サイズの抑制に重要な役割を果たすことを示した.さらに,梗塞作成後3週間の時点における左室リモデリングの程度を左室圧-容積関係を用いて検討し,有意な左室リモデリングの抑制効果を認めた.この左室リモデリング抑制効果は心筋梗塞サイズ抑制効果と相関し,急性期の介入による梗塞サイズ縮小効果は慢性期の左室リモデリング抑制効果ももたらすことが証明された.さらに,ニコランジルとジアゾキサイドはいずれもミトコンドリアのATP感受性カリウムチャネルを選択的に開口するが,その開口機序に違いがあることを示した.ニコランジルの効果はprotein kinase Cの選択的阻害薬chelerythrineによって部分的に抑制されるが,ジアゾキサイドではそのような効果は認められなかった.そこで,Langendorff灌流心を用いて,protein kinase Cisoformの活性化の違いをWestern blotによる細胞内転位をみることで評価した.PKC δとPKC εが細胞質からミトコンドリアへ転位することが示され,さらにニコランジルのNO様作用がPKCの活性化を介してミトコンドリアK-ATPチャネルを開口し,心筋梗塞抑制に働くことが示された.また,培養心筋細胞を用いたミトコンドリア膜電位の測定を,JC-1蛍光色素を用い,細胞内カルシウム濃度をFura2-AMを用い,レーザー共焦点顕微鏡にて同時測定を行った.ミトコンドリアK-ATPチャネルの開口がどのような機序で心筋保護に働くかを検討した.PKCの下流のシグナル伝達についてはPKCと結合する蛋白の同定を,免疫沈降法によって確認し,新たなアダプター蛋白の存在を確認した.
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