研究課題/領域番号 |
13670770
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
循環器内科学
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
松岡 秀洋 久留米大学, 医学部, 講師 (80248393)
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研究分担者 |
菅野 良 久留米大学, 医学部, 助手 (80330819)
服巻 信也 (腹巻 信也) 久留米大学, 医学部, 講師 (90248352)
池田 久雄 久留米大学, 医学部, 助教授 (50168134)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
2002年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2001年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 動脈硬化 / 血管内皮 / 酸化ストレス / 炎症細胞 / 高脂血症 / スタティン / 冠危険因 / 一酸化窒素 / 冠危険因子 / レジン |
研究概要 |
近年、動脈硬化が全身的な炎症のプロセスとして捉えられているが、それが何によってmediateされているか明らかでない。in vitroにおいて、活性化された炎症細胞が放出する大量の活性酸素種やサイトカインが内皮傷害をもたらすことが報告され、血管内皮-炎症細胞の機能的連関が血管傷害に果たす役割が注目されている。スタティンにはその強力なLDL低下と独立して、多彩な血管保護作用を有することが示唆されていることから、内皮-炎症細胞の機能的連関がスタティンにより改善しうるかについて以下の臨床的検討を行った。他にリスクファクターを持たない高脂血症患者に対し、HMG CoA還元酵素阻害剤(fluvastatin 20mg)または陰イオン交換樹脂(colestimide 3g)を3ヶ月間クロスオーバーデザインにて投与した。各々の前後で、(1)チトクロームCの還元反応による好中球活性酸素種産生能、(2)酸化ストレスの指標としてlag timeにより評価したLDL酸化抵抗性、(3)高解像度超音波診断装置により反応性充血時の上腕動脈血流依存性血管拡張反応(FMD)を内皮機能の指標として計測した。ニトログリセリン(NTG)による内皮非依存性血管拡張反応を内的対照とした。(4)更に、ex vivoにおける好中球の内皮傷害性を検討するために培養内皮細胞に対し患者由来好中球を暴露させ活性化を検討した。fluvastatinとcolestimideは、すべての症例において同等に血中LDLを低下させた。fluvastatin投与により好中球活性酸素種産生能は有意に低下したが、colestimideによっては変化を認めなかった。fluvastatinにより明らかにlag timeが延長したが、colestimideはこれに影響を与えなかった。高脂血症患者において低下していたFMDは、colestimide投与後は不変であったが、fluvastatinはこれを著明に改善した。一方、何れの薬剤に於いても反応性血流増加度、NTGによる血管拡張反応は変化しなかった。スタティン投与による血管内皮機能の改善度と好中球活性酸素種産生抑制度及びLDL酸化抵抗性の増強度の三者の間には明らかな正相関を認めた。高脂血症患者由来好中球を培養内皮細胞に暴露すると、内皮活性化の指標としてのMac-1発現が亢進し、Ca ionophoreによる内皮NO合成酵素活性化のeNOSリン酸化が低下しており、Statin内服により、これらは何れも正常化した。スタティンとレジンはLDLを同程度に低下させたにも拘わらず、スタティン投与に於いてのみ、炎症細胞活性が抑制されLDL酸化抵抗性が改善し、これに伴い血管内皮機能が改善した。その機序として、循環血中多核好中球による内皮細胞活性化とeNOSリン酸化の抑制が示唆された。以上の結果から、スタティンは抗動脈硬化作用の一つとして炎症細胞-血管内皮細胞の機能的連関を回復させることが示唆された。今後、高血圧を初めとした他の危険因子保有者や冠動脈疾患患者において、血管内皮-炎症細胞の機能的連関が存在するか、またそれが治療により改善するかについて検討する予定である。
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