研究概要 |
EBウイルス(EBV)関連疾患は多様であり,その成因としてウイルスまたは宿主の異常が考えられているが,詳細は不明である.X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)はEBV感染に対する特異免疫応答の欠陥を有する先天性免疫異常であるが,その臨床表現型は致死的伝染性単核症,悪性リンパ腫,異常ガンマグロブリン血症など多彩であり,明らかな家族歴がないと臨床診断が困難である.1998年にXLPの責任遺伝子SAPが同定されたのを機に,従来わが国にXLP患者は存在しないと考えられていたが,重症EBV感染症の男児40例についてSAP遺伝子解析を行なったところ,9家系10例のXLP患者が同定された(Blood 98:1268,2001).また慢性活動性EBV感染症ではSAP遺伝子変異の関与は認められなかった.XLPは半数以上で致死的伝染性単核症を発症し,死亡率も90%以上であり,造血幹細胞移植が唯一の根治治療であり,早期診断・早期治療が望まれる.そこでX連鎖無ガンマグロブリン血症等で行なわれているフローサイトメトリーによる簡易診断の開発が望まれた.ラット免疫法により抗SAPモノクローナル抗体を樹立し,フローサイトメトリーに応用したところ,新たに3家系のXLPを診断することができた(Int Immunol 14:1215,2002).さらに最近IgG2サブクラス欠損症でEBV関連リンパ腫を発症した17歳男児についても新たにXLPと診断した.フローサイトメトリーに利用できる抗SAPモノクローナル抗体はわれわれの樹立した抗体が唯一であり,諸外国の研究室にも供給を行なっており,患者診断のみならず,SAP蛋白の機能解析に果たす役割は大きいと思われる.
|