研究概要 |
ITPにおける血小板造血能は元来正常で,過剰な血小板破壊が造血を凌駕するために生じると考えられてきた.しかし患者骨髄に豊富に見られる巨核球は,血小板産生像を全く欠き,本症の血小板減少を末梢での血小板破壊だけで説明するのは困難であり,抗TPO阻止抗体による血小板造血障害の存在など,血小板造血障害併存が示唆される.本研究では,抗原吸着sandwich ELISA法を開発してITPにおける抗TPO阻止抗体を検索した.抗TPO結合性多クローン性抗体を添加したwell plateに,精製TPOを吸着し,吸着抗原への患者精製IgG画分の結合を検出する高感度antigen-capture sandwich ELISA法を開発し,精製吸着抗原量を一定化して,これに標識マウスIgG型多クローン性抗TPO抗体を標準抗体としてシステムの定量化を計った.精製TPOを,マウス抗TPOモノクローナル抗体を吸着したwell plateに段階希釈して添加孵置し,block後,標識抗TPO抗体を加えて結合抗体量を測定し,標準曲線を作成した.同意を得て採取された小児ITP患者血清(急性型37例,慢性型43例)を用いて循環抗TPO抗体のスクリーニング検査を行った.被験血清を抗TPO MoAb吸着plastic wellplateに添加孵置して洗浄後,ピオチン標識抗ヒトIgGモノクローナル抗体を添加してTPOに結合したIgG抗体をavidin-biotin peroxidase systemでスクリーニング検出した.この結果,急性ITPの3例,慢性ITP4例に,normal+2SD以上のIgG吸着がみとめられた.当該ITP血清について,protein-Aを吸着したセファロースカラムを用いたリガンド=レセプターアフィニティクロマトグラフィーにより,IgG画分を精製した.この患者血清のIgG画分を用いて,ソステムに精製TPOを液相添加し,吸収試験を実施して抗TPO抗体の特異性を検討した.この結果,ELISA陽性血清抗体価は抗原吸着によって何れもまったく吸収されなかった.以上より,検討し得た限り小児期ITPで抗TPO阻止型自己抗体はITPにおける血小板減少への関与はないと結論された。
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