研究概要 |
ヒト末梢血からCD14陽性細胞を分離し、それにGM-CSF・IL-4を加え培養して樹状細胞を得た。得られた樹状細胞に紫外線(UVB)を照射し、その形態的・機能的変化に関し解析を行い、この樹状細胞がトレランスを担うT細胞を誘導できるか否かを検討した。低線量のUVB照射により一部の樹状細胞はCD40,CD54,CD80,CD86,HLA-DRなどのcostimulatory分子を未照射樹状細胞よりも強く発現した。樹状細胞の産生するサイトカインをreal-timePCR法およびELISAにより解析した結果、低線量のUVBにより樹状細胞はIL-1beta, IL-6,IL-8,TNF-alphaなどのpro-inflammatory cytokineをより多く産生することが明らかとなった。また機能的にもT細胞のアロ抗原反応性をより強く誘導した。一方、高線量のUVBでは多くの樹状細胞はアポプトーシスを介して細胞死に陥った。UVBによる樹状細胞の活性化とアポプトーシスの過程には、その双方ともにp-38 mitogen-activated protein kinasesが関与していることが、Western blottingによるリン酸化された酵素の検出、および阻害実験により明らかとなった。また、低線量のUVBを照射された樹状細胞は、CD86がほとんど発現されていない一方でHIA-DRを強く発現し、抗原提示細胞がT細胞に免疫寛容を誘導する際の表面形質に合致していた。これらの樹状細胞が、紫外線照射による免疫調節性CTLA-4+CD4+T細胞の誘導に関与している可能性を、ナイーヴT細胞とUVBを照射した樹状細胞とを共存培養したところ、ナイーヴCD4T細胞に関してはIL-10産生細胞の割合を増加させ、またメモリーT細胞についてはIL-4およびIL-10産生細胞の割合をそれぞれ増加させる傾向が認められた。
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