研究概要 |
(1)IgEを介した遅発型反応におけるSTAT6 Decoy DNAの抑制効果の検討 BALB/cマウスにSTAT6 Decoy DNAを組み込んだリポゾームとコントロールのリポゾームを投与後に抗DNP-IgE抗体を投与してDNFBにて惹起後の耳介腫脹反応を経時的に比較検討した。その結果、STAT6 Decoy ODN投与マウスでは明らかに陽性コントロール群に比較して遅発反応が抑制されていた。皮膚病変部の炎症反応を解析するため、腫脹した耳介の凍結切片を用いて浸潤細胞γδthy1 DEC,ランゲルハンス細胞、などの炎症細胞およびIL-2,IL-4,IL-12,IL-13,IFN-γなどのサイトカインの局在、発現程度を免疫組織化学的で蛋白レベルを,In situ hybridization法にてmRNAレベルを解析した。その結果、STAT6 decoy ODN投与群ではh2細胞の浸潤が抑制、好酸球の浸潤も減少していた。また、血清中のIgEレベルを経時的に比較検討したが変化は見られなかった。 (2)接触アレルギー誘導マウス、遅発型反応誘導マウスのリンパ節におけるSTAT6活性化の経時的解析 TNCBなどのハプテンで経皮感作もしくは抗原特異的IgEを投与したBALB/cマウスのリンパ節細胞、表皮細胞を経時的に調整し、その核内蛋白抽出物のSTAT6,STAT4,STAT1の蛋白、mRNAおよびDNA結合能をWestrn blotting法、RT-PCR法、ゲルシフト法で解析した。(佐藤) (3)In vitroにおける肥満細胞のFceRIを介した反応の抑制機序の解析 BALB/cマウスの骨髄細胞を調整してIL-3,M-SCFを加えた培養液にて3週間培養することにより肥満細胞を作成した。この肥満細胞をDNP-IgEで感作後にDNP-BSAにて惹起した。惹起前にSTAT6 Decoy ODNをtransfectさせた肥満細胞では惹起により誘導されるIL-6,TNF-αなどのサイトカイン産生を抑制することが明らかにされた。接触アレルギー、遅発型反応における炎症抑制機序の一つにSTAT6 Decoy ODNによる肥満細胞からのサイトカイン産生抑制の機序が関与していることが示唆された。 今回、STAT6 Decoy ODNが接触アレルギーのみならず抗原特異的IgE誘導性遅発型反応を抑制することが明らかにされた。今後、この抑制機序の解析とSTAT6 Decoy ODN軟膏の開発をしていく必要がある。また、対象疾患もアトピー性皮膚炎のみならずアトピー喘息、アトピー鼻炎などでの有効性も検討したい。
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