研究概要 |
スピッツ母斑は臨床的にも組織学的にもメラノーマと鑑別が困難な良性の病変である。現在のところ、鑑別には皮膚病理組織がもっとも有用であるが、鑑別不能な症例も少なくない。典型的な病理組織像を呈するスピッツ母斑およびメラノーマの組織切片よりマイクロダイセクション法によりメラノサイトをそれぞれ取り出し、comparative genomic hybridization (CGH)法にて染色体の欠失あるいは増幅を検討予定であった。この方法は両者の鑑別の手段の一つになる可能性があると考え、研究を開始した。 研究成果 ホルマリン固定、パラフィン切片組織から抽出されたDNAは細かく切断されており、CGH法はかなり困難との報告がある。まず、日本人女性の末端黒子型悪性黒色腫より樹立された細胞株MMG1を用いCGH法の技術の確立を試みた(対照には成人正常女性末梢血)。 1.DNAの抽出:簡便化されたDNA抽出キット(DNA Extractor WBkit,和光純薬)を用いても問題はない。 2.ラベリング時間:プローブのサイズに関連するため種々の時間で検討を試みたが、細胞株MMG1では1時間30分が最適時間である。(対照末梢血は3時間が最適である。) 3.エタノール沈澱:種々の時間を検討したが1時間-80℃のフリーザーに置くことで問題はない。 4.ハイブリダイゼーション:湿潤箱で37℃、72時間インキュベーションで問題はない。 今後の研究の展開CGH法の技術は確立できたが、これはあくまでも培養腫瘍細胞より得られたDNAを用いた場合である。ホルマリン固定、パラフィン切片組織においてはCGH法に適する十分な量と十分に長いDNAの抽出ができるか問題となる。この問題を解決できれば、目的とした病理組織切片よりのCGH法が可能となる。
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