研究課題
基盤研究(C)
本研究代表者は以前に種々の年齢の欧米人由来の初代培養皮膚線維芽細胞、リンパ芽球様細胞を材料とした研究で、宿主細胞回復を指標とした紫外線性DNA損傷の修復能は加齢に伴い低下し、supF遺伝子を突然変異のマーカーにもつシャトルベクターにおける紫外線誘発突然変異頻度は加齢により上昇することを報告した。本研究ではまず最初に、種々の年齢の日本人由来の初代培養皮膚線維芽細胞を用いて、欧米人由来細胞を用いた場合と同様に、加齢に伴って紫外線性DNA損傷の修復が低下するという結果を確認した。次いで、紫外線によるDNA損傷(ピリミジンダイマー、6-4光産物)に特異的なモノクローナル抗体を用いたELISA法により損傷除去速度を直接的に評価したところ、加齢による変化が認められなかった。これらの2つの所見は、高齢者由来の細胞では、紫外線性DNA損傷の主要な修復機構であるヌクレオチド除去修復(NER)においてDNA損傷の認識や切除の過程ではなく新生DNA鎖の修復合成過程が機能低下に陥っている可能性を支持する。そこでNERに関わる既知の因子のうちの20種について、幼児および高齢者由来の皮膚線維芽細胞における定常状態での遺伝子発現をATAC-PCR法で検討した。その結果、高齢者由来の細胞ではNERの各ステップ(DNA損傷認識、DNA開裂、DNA損傷除去、修復合成)の因子が全体的に低下する傾向がみられたが、RFCやDNA polymeraseδ、εなどNERの中でも特に後期過程(修復合成)に関わる因子に顕著な発現低下を認めた。さらに、DNA polymeraseδの著明な低下を定量リアルタイムPCR法、ウェスタン法で確認した。過去に,加齢により著明に低下するとの報告があったXPA遺伝子の発現は、今回の定量リアルタイムPCR法による検討では僅かしか低下していなかった。以上の結果より、紫外線性DNA損傷の修復能力は加齢に伴い低下することは人種を問わない普遍的な事象で、その分子機構としてNERの後期過程に関わる因子の発現減少がもたらす修復合成の遅延が考えられた。今回の研究で、これらの因子が光老化皮膚に対する治療や予防のための薬剤、化粧品のシーズとなりえる可能性が示唆された。
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