研究概要 |
LacZあるいはGFPをレポーター遺伝子として持つレトロウイルスを作製し,これを胚齢8.0〜13.5日のマウス羊水中に注入することで,胚体体表上皮への遺伝子導入法の確立を目指した。 poly-L-lysineをウイルス液に添加すると背部皮膚、四肢、尾部において遺伝子導入効率を向上させ、poly-L-ornithineは尾部への遺伝子導入効率をることがわかった。1胚当たりのウイルス投与量が100,000cfuまでは、ウイルス濃度を高めるにつれ遺伝子導入効率は上がるものの、それ以上のウイルスを投与するとかえって陽性細胞数は減少した。LacZ陽性検出のための2%PFAによる至適固定時間を検討した結果,胚齢16.0日の全胚の場合3.5時間固定が最適であった。LacZ陽性細胞の出現にはいくつかのパターンが見られたことから,周皮を生み出す基底細胞と表皮細胞を生み出す基底細胞とは,起源を異にするものと考えられる。また,LacZレトロウイルスの場合でもGFPレトロウイルスの場合でも,生後11週でも陽性細胞が残存することが確認された。こうしたケースでは毛包に陽性細胞が見られたことから,この方法で毛包細胞の細胞分化過程を追跡できるとともに,遺伝子導入実験が可能であることが示された。 二段階培養法による,解離毛芽細胞からの毛芽再構築培養実験では,4℃で6時間トリプシン処理をすることで,細胞がうまく解離することが明らかになった。また,GFPトランスジェニックマウス由来の毛芽細胞を混入する実験から,毛芽細胞が表皮細胞と細胞選別されて自己集合することがわかった。しかし,in vitroで毛包を分化させることには成功しなかった。これらの結果から,自己集合した毛芽細胞が,真皮集塊に接触できないと表皮細胞へと脱分化してしまう可能性が示された。
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