研究概要 |
ADAMファミリーはdisintegrinとmetalloproteaseドメインを有する膜貫通型蛋白であり、現在までに30種が報告されている。ADAMにはcleavage作用、detach作用、attach作用が認められており、表皮角化細胞における分化、増殖と細胞の移動に重要な役割をはたしていると考えられるが、詳細な検討はなされていない。本研究では、(1)表皮角化細胞の増殖・移動・分化におけるADAMの関与、(2)ADAMのmelalloproteaseドメインを破壊したドミナントネガティブ効果を持つアデノウィルスベクターを作成し、in vitroでの増殖・移動と分化刺激時の角化細胞に与える影響、(3)尋常性乾癬病変部でのADAMの発現の解析を目的とした。 adenovirus vectorの作製 Dominant negative ADAM9,ADAM12,constitutive active ADAM9,ADAM12のconstructを作製し、cosmid cassetteに組込み、293細胞にて相同組換えを起こさせそれぞれのadenovirus vectorを作製した。大量培養後、塩化セシウム密度勾配法にて精製し、透析した後、超低温槽にて保存した。 ADAMファミリーのヒト表皮角化細胞培養系での発現。 ADAM mRNAの31種あるADAMのうち、プロテアーゼ活性を有することが予想される19種類についてreal timePCR用にそれぞれ特異的なTaqman probeを作製した。正常ヒト表皮角化細胞を無血清培養法で培養し、サブコンフルエントの状態に達した後にEGFの濃度を変えて添加し0、1、3、6、12、24、48時間後に細胞よりtotal RNAを抽出し、ADAMファミリーのmRNAの誘導の有無をReal time PCR法で定量的に検討した。角化細胞においてはADAM9がメインに発現していた。 表皮過増殖疾患である尋常性乾病変部位におけるADAMの発現。 尋常性乾癬病変部組織13個、正常ヒト表皮11個をそれぞれ60℃、1分間の熱処理にて表皮と真皮を剥離し、液体窒素にて急速に凍結した。凍結表皮をホモジナイズし、total RNAを抽出した。ADAMファミリーのmRNAの発現をreal time PCRにて検討した。尋常性乾癬病変部ではADAM10,17,20,28の発現が低い傾向を示したが、有意差は認めなかった。また、ADAM30が高い傾向を示したが有意なものではなかった。ADAM12,21,28,TS3,TS4,TS5,TS6は正常と比較して特に発現に差はみられなかった。ADAM15は尋常性乾癬病変部で発現が有意に低下、ADAM19,TS7は発現が有意に増加していた。
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