研究概要 |
メラノサイトの初期の発生に関わる因子のうちSCF/KIT情報伝達系はメラノサイトが神経管から皮膚への移動の時期に必須であること、ET3がこの時期のKIT陽性のメラノサイト前駆細胞を爆発的に増殖させる結果、メラノサイトが全身に供給されると考えられている。またMITFはチロシナーゼやtyrosinase rerated protein 1(TYRP1)の転写因子であるが、MITFのミュータントはメラノサイトが生存しないため白色毛であり、MITFの重要な役割は他にもある可能性がある。 平成13年度 Mitf^<mi-ew>マウスは出産直後、仔を食殺してしまうため殆ど繁殖せず、神経冠の培養ができなかった。その間、前回交付を受けた研究で樹立した幼若メラノサイトの細胞株からKIT陰性のより幼若な紳胞株を樹立した。方法:前回報告した細胞株はKIT, TYRP1,TYRP2,陽性でチロシナーゼ、DOPA反応陰性であったが、その培養液からSCFを除去し継代を重ねることにより、KIT陰性の細胞株となった。メラノサイトがKITを発現する過程でどの因子がその作用を持つかまだ解明されていないのでこの細胞はその解明のために非常に有用な手段を提供する。 平成14年度 TPAとコレラトキシシ(CT)はメラノサイトの培養および分化に重要な因子であることが報告されているので、この細胞に添加してみたところ弱陽性であるがKITが発現した。添加後3日頃からKITの発現が認められ、至適濃度はTPA単独では1nM, CTは0.05nM, TPA+CTでは相乗効果は無かった。今後、この細胞を用いてKITを誘導する内因性因子を検索する。 MITFの機能を検討するためMitf^<mi-ew>マウスの神経冠の培養系にメラノサイト分化に関与する因子を添加し、MITFの機能を補える因子があるか検討した。交配により得られたMITFのミュータントの胎仔数が十分得られなかったので、検討できた因子はまだ少ないが、まず、メラノサイト分化の初期に重要な因子であるSCFおよびエンドセリン3(ET3)を使用し、次にKIT陰性のcell lineを用いて検討した実験でKIT発現を誘導したTPAとCTについても検討した。結果:SCF、ET3、SCF+ET3、TPA+CTを添加培養した神経冠細胞中にはこの培養系での初期のメラノサイトのマーカーとなるKIT陽性細胞は出現しなかった。ところが、SCF+FT3にTPAとCTをすべて添加すると、弱いがKIT陽性細胞が持続的に観察された。これまでにこのマウスからメラノサイトを培養できた報告はなく、またMITFの機能をTPAとCTが補える事が示唆されたことは、今後MITFの機能の解析のために非常に興味ある結果といえる。
|