研究概要 |
正常圧水頭症(NPH)における頭蓋内の力学的特性を明らかにするために,phase contrast(PC)cine MRIを使用してdriving vascular pulsationと中脳水道における脳脊髄液(CSF)流量波形から算出した周波数位相伝達関数(PTF)を評価した. 中脳水道長軸上の中点の垂直面において,CSF流量波形と血流量波形を心電同期PC cine MRIを使用して測定した.各心時相における脳へ流入する動脈と脳から流出する静脈の差分を入力関数(driving vascular pulsation), CSF流量波形を出力関数として,力学的特性に関与するPTFを両関数から算出した.くも膜下出血後のNPH症例(SAH-NPH)およびSAH-NPHのシャント手術後例,健康正常ボランティアについてPTFを測定した.また,acetazolamide経静脈注入(脳血液量上昇)5分後においてもPTFを測定した.さらに頭蓋内コンプライアンスの指標であるpressure volume response(PVR)とPTFを比較した. SAH-NPH群の基本波におけるPTFは,健康正常ボランティア群よりも有意に大きかった.また,SAH-NPHシャント手術後群のPTFは,健康正常ボランティア群と同一傾向を呈した.acetazolamide注入後のPTFは,注入前と比較して全周波数において有意な差が認められなかった.これはPTFが血流動態に依存しないことを示している.基本波におけるPTFとPVRは正の相関が認められた. PC cine MRIを使用してPTFを解析することで,NPH症例における頭蓋内の力学的特性が非侵襲的に得られる.
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