研究概要 |
本研究では,以下に示すような人体の診断領域および撮像モダリティに対し,それぞれにおけるコンピュータ支援診断(computer-aided diagnosis, CAD)システム(マルチCAD)の構築に関する基礎的な研究を,2年間にわたり行った.すなわち,1)胸部X線CT画像,2)腹部X線CT画像,3)頭部MR画像,4)腹部MR画像,5)乳腺超音波画像の5つのイメージングと身体の領域を対象に,マルチCADシステムの開発を行った.CAD研究においては,画像データベースの質と量がシステム開発にとって重要な要素であるが,本研究では,共同研究者らの協力を得て,それぞれの領域で50-200症例のデータベースの収集を行った.1)では,肺野におけるノジュールの自動検出システムを開発した.また,体幹部における正常構造の自動抽出・識別するアルゴリズムの開発を行った.具体的には,肺領域における骨陰影,胸郭,肺門部,気管支の自動抽出であり,また,肺野区間の自動分類法の開発である.2)では,大腸内におけるポリープの自動検出システムの開発を行うとともに,肝臓領域の自動抽出についても研究を行った.また,椎体部の定量解析手法(骨そしょう症診断を目指して)の検討を行った.3)では,ラクナ梗塞領域の自動検出法を開発した.4)では,肝臓領域の自動抽出法を開発するともに,肝臓における病変の自動分類システムを開発した.5)では,乳腺腫瘤性病変の良悪性鑑別の手法を開発した.これらのそれぞれの研究において,新しい技術的な手法を開発するとともに,収集した症例を用いて性能評価を行い,臨床応用への可能性などを検討した. 本研究によって,マルチCADシステム開発の有効的な結果を得たが,まだ問題点も多く(システム性能の改良への技術開発,臨床例の増加によるさらなる性能評価など),今後もさらなる継続的な研究開発を行うことが重要である.
|