研究分担者 |
大濱 栄作 鳥取大学, 医学部, 教授 (50018892)
松末 英司 鳥取大学, 医学部, 助手 (30325013)
木下 俊文 鳥取大学, 医学部, 講師 (70314599)
飴谷 資樹 鳥取大学, 医学部・付属病院, 助手 (90332775)
奥寺 利男 秋田県立脳血管研究センター, 研究局長
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研究概要 |
1.剖検脳MRIの撮像と病理組織学的検討:injection studyによるmicroangiogramと病理組織との比較検討では,海馬体は主に後大脳動脈から,一部は前脈絡叢動脈から栄養されていた。脳実質外走行部分は,前・中・後海馬動脈に分類されるが,今回の検討から胎生期海馬溝の遺残腔の成因は,海馬動脈からの髄質動脈と関連している可能性が高いものと考えられた。 2.脳ドック受診者およびアルツハイマー型痴呆例での検討:脳ドック受診者195例(年齢39-83歳,男90例,女105例),アルツハイマー型痴呆30例(年齢56-91歳,男7例,女23名)のMRI所見を検討した。胎生期海馬溝の遺残腔と考えられる血管周囲腔は,側頭葉内側部にT2強調像,FLAIR像で脳脊髄液と等信号を呈し,周囲にgliosis等による信号変化のない円形,卵円形構造として観察された。この血管周囲腔は脳ドック受診者195例中94例(48%),アルツハイマー痴呆例30例中13例(43%)に認められた。また,複数個認めた症例は,前者で40例(21%),後者で7例(23%)であった。大きさは,直径1-3mmを示すものが大部分であったが,脳ドック受診者3例,アルツハイマー型痴呆では1例で,3mm以上の大きな血管周囲腔を認めた。なお,血管周囲腔の拡大と側脳室下角および鈎溝の拡大との関連性は認められなかった。以上から,側頭葉内側部に観察される胎生期海馬溝の遺残腔の拡大と側頭葉内側の萎縮所見との関連性は見いだせなかった。 以上の結果から,胎生期海馬溝の遺残腔の成因は,海馬動脈からの髄質動脈と関連した血管周囲腔の拡大と考えられたが,脳ドック受診者とアルツハイマー型痴呆例においてその出現率,大きさに相違はなく,この拡大の臨床的意義は少ないものと推測された。
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