研究概要 |
1.スパイロメータを用いて呼吸モニターを行うことにより体幹部腫瘤に対して同一呼吸位相で放射線照射を行う体幹部定位放射線治療システムを開発した、健常者について本システムを用いて治療計画CTを行い,解剖学的構造物の移動誤差を確認した結果,いずれの部位でも2mm前後であった.さらに,呼吸モニターの気道バルブを遠隔操作によって呼気相で閉鎖できるよう改良を加えた結果,照射時の標的の位置精度が高くなり,高精度な体幹部定位照射が可能となった. 2、末梢型I期非小細胞肺癌19例19腫瘍,他の原発性肺癌のBoost照射など6例7部位,転移性肺腫瘍20例29部位の計55部位に対して本治療システムを用いた定位放射線照射を行った.治療効果は,原発性非小細胞肺癌で治療後3か月以上経過観察された19例中10例(53%)がCR,6例(32%)がPRで良好な腫瘍縮小効果が認められた.転移性肺癌でも3か月以上経過観察29部位のうち滑膜肉腫の2部位を除く27部位に縮小効果がみられた.末梢型I期非小細胞肺癌症例の治療後の観察期間は4から24か月(中央値15か月)で,肺への有害事象として一例にgrade2 (NCI-CTC)の肺臓炎が認められたが,他はいずれもgrade 1以下であった.その他の治療後の重篤な有害事象は認められなかった. 3.^<192>Irを用いた気管支腔内照射を行った胸部X線写真陰性の扁平上皮癌11例13病巣(内視鏡的早期肺癌5例)を対象として,治療の初期効果と有害事象について分析した.照射法は原則として気管支腔内照射を先行し,外照射を併用した.腔内照射の線量は,気管支内径に応じて線源中心から5〜10mm(気管10mm,主気管支・中間幹・葉気管支7mm,区域支5mm)の点で5Gy/回とし,10〜25Gyの照射を行った.外照射線量は1日1回2Gyの単純分割照射で40Gyを目標とした.観察期間は最短10か月〜最長46か月で,局所再発は2例に認められた.内視鏡的早期肺癌の5例には現在まで局所再発は認められていない.また,臨床症状を呈する重篤な有害事象な認められていないが,治療部位の気管支粘膜に易出血性変化や潰瘍形成を生じた症例が認められ,至適線量の慎重な検討が必要と考えられた.
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