研究概要 |
実験は北里大学動物実験指針に基づいて行った。実験には雄性Wistar系ラットを用いた。NR1に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドは,HVJ-リポソーム法により,両側の腹側および背側海馬へ導入した。アンチセンス導入によるNMDA受容体の発現抑制効果はウエスタンブロット法を用いて解析した。アンチセンスを導入したラットにおいて,導入から5〜11日後にMorris水迷路課題とプレパルス・インヒビション(PPI)を行い,記憶機能と認知機能に関する検討を行った。 ウエスタンブロット法による解析により,NR1のアンチセンスを導入したラット海馬では,NR1の発現が,導入3日後〜11日後に約30%抑制されていることが確認された。Morris水迷路課題においては記憶の獲得に差がみられなかったが,PPIにおいてはNR1ノックダウン群においてPPIの障害がみられた。この障害はHaloperidolを投与すると,容量依存性に改善される傾向が見られた。しかしプレパルスの大きさによっては、この様な現象が見られなかった。 したがって、NR1の30%の発現抑制では記憶機能に影響を与えないが,認知機能に影響を及ぼすと考えられた。また、Haloperidolは、NR1の機能低下によるPPIの障害に対して、拮抗する作用を持つことが示唆された。なお、プレパルスの大きさによって結果に違いが見られることから、Haloperidolはある条件の範囲内で記憶機能と認知機能に対して効果があることが示唆された。
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