研究概要 |
統合失調症の病態生理に関連する遺伝子についてはこれまで精力的な研究が行われてきたにもかかわらず一貫した所見が得られていないことから,多くの集団に共通するmajor geneが存在しない可能性も示唆されており,近年は遺伝子関連研究による遺伝的危険因子の検索が多くのマーカーを用いて行われている。本研究では統合失調症の発症脆弱性に関連する遺伝子座位を見出す試みとしてわれわれが系統的に解析をすすめているDNAマイクロサテライトマーカーを用いたゲノムスキャンにおいて,第5,6番染色体に焦点を当てて,解析を行った。対象は統合失調症患者130名および健常対照者161名であり,これらの対象者に第5,6番染色体上の40カ所のDNAマーカーのアレル分布を調べ,2群間のアレル分布頻度に差があるかどうかについて比較検討した。その結果,健常者群におけるD5S400,D6S426,D6S434のheterozygosity出現頻度は,Hardy-Weinbergの平衡法則から得られた理論値よりも有意に低かった。またheterozygosityの出現頻度は,40のDNAマーカーのうち18部位で今回得られた日本人とフランス人の間に有意な人種差が認められた。統合失調症群と健常対照群との群間比較ではD6S287においてBonferroniの多重比較補正後も有意な差(α<0.0013)が認められた。以上の結果から,D6S287の近傍に統合失調症の発症脆弱性に関連する遺伝子の存在する可能性があるものと考えられる。
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