研究概要 |
MAP kinase kinase kinaseであるMEKK1,2,3,4は様々なストレス刺激により活性化され、下流のシグナル伝達分子のMAP kinase kinaseを活性化する。これらのMEKK familyの中で、最初にクローニングされたMEKK1は、細胞内で種々の蛋白と結合し、細胞の増殖、分化、細胞死、あるいは細胞運動の調節に関わっていることが報告されてきた。研究分担者の湯尻らは、このMEKK1をジーンターゲティング法により欠失したマウスや細胞を用いることによって、MEKK1の生理的な役割を明らかにしてきた(Yujiri T. et al. Science 1998, JBC 1999, PNAS 2000)。MEKK1はC末端に約320アミノ酸残基のkinase領域を有し、約1,100アミノ酸残基の調節領域を有している。我々は、MEKK1のN端144-443アミノ酸残基の領域にfocal adhesion kinase (FAK)との結合部位が存在することを同定した。このMEKK1とFAKの結合はepidermal growth factor (EGF)刺激により増強され、生理的に意味のあるものと考えられた。興味深いことに、FAK欠損細胞において認められたinsulin receptor substrate 1 (IRS-1)の発現レベルの低下が、MEKK1欠損細胞においても認められた。IRS-1はインテグリンを介した刺激によって発現レベルの増加が認められることから、我々はMEKK1欠損細胞を用いてインテグリンを介するFAKのリン酸化やERK, JNKの活性化を検討したが、野生型細胞と比較して有意差は認められなかった。このことはMEKK1とFAKのそれぞれに依存するIRS-1発現メカニズムが存在することを示している。さらにinsulin like growth factor 1(IGF-1)によるERKの活性化においてMEKK1が部分的に関わっていることを明らかにした。これはIRS-1の発現に依存しない経路によってMEKK1がERKの活性化に関わっていることも報告した。(Yujiri T. et al. JBC 2003)
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