研究概要 |
目的:PPARγとPPARαは炎症抑制機転に深く関与する事が知られている。我々は以前PPARγが尿細管細胞のアポトーシスを抑制することを報告した。今回我々は(トログリタゾン)Tr.の新たな臨床応用の可能性を知る目的でラット実験腎炎に対するTrの効果を検討した。方法:WKYラットより基底膜を精製しこれをNZWウサギに免疫して抗基底膜抗体を得た。これをWKYラットに投与し半月体形成性腎炎ラットをえた。 結果:PPARγの発現を特異抗体にて検討したところ尿細管、メサンギウム細胞、糸球体上皮細胞に発現していた。抗基底膜抗体を投与したラットは10日後より半月体形成と共に尿中に蛋白尿を認める。Trはこの抗体の作用を抑制し、半月体の形成と尿中蛋白の減少効果を有したPPARα活性剤に同様の作用はなかった。ED-1陽性のマクロプァージ、CD4陽性細胞、CD8陽性細胞、および好中球の浸潤に対しても同様に抑制作用を有していた。腎炎発症の腎におけるストレス蛋白の発現をcDNAアレーを用いて検討したところmethyCPG binding protein, glutathione transferase,数種のribosomal蛋白,細胞質グルタグルタチオンペルオキシダーゼ,膜グルタチオンペルオキシダーゼが増加していた。同時にSP1/Ste 20,nck, ash&phospholipase C-gamma-binding protein, HSP70などが減少していた。これらの蛋白の発現に対するTrの効果について本研究報告書作成時点で研究期間が終了し、その後の研究の進展は得られなかった。 総括:Trは種々の組織において抗炎症作用を有することが知られている。今回我々は抗基底膜抗体による実験腎炎を作成しTrの抗腎炎作用を見い出した。これに伴い複数の遺伝子の発現が変化していた。このことは従来報告がなく今後の腎炎の治療における新しい可能性を示すもの考えられる。
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