研究概要 |
血液透析技術の進歩により,腎不全患者の社会復帰が可能となったが,骨病変などの合併症がその大きな障害となっている.当研究では,その中で無形成骨の発症に関与する,骨のPTHに対する抵抗性の機序を中心に検討を行った. (1)PTH分解産物の検討 1-84PTHのみを検出するwhole PTHアッセイを用いて検討したところ,腎不全のいずれの時期においても,従来のintact PTHアッセイは7-84PTHフラグメントを測りこんでいたことが明らかになった.また,7-84PTHの蓄積に腎機能の低下が大きな役割を果たしていることを証明した. (2)モデルラットにおけるPTH抵抗性の検討 10週齢SD系雄性ラットに,甲状腺副甲(TPTx)を施し,さらに1/2,3/4,5/6腎切除(Nx)またはsham手術を行い,rat PTH(1-34)を0.1μg/kg/hrで持続投与し6週間飼育した.TPTx-Nx群は,TPTx-sham群に比し,全て低回転骨に移行しており,類骨量,骨形成率の低下は腎機能低下の程度に依存しており,活性炭製剤AST120を経口投与したところ,骨芽細胞機能,骨形成の改善がみられた.したがって,腎不全で蓄積する何らかの物質が骨のPTHに対する抵抗性を惹起する可能性がある. (3)骨吸収抑制に対するosteoprotegerin(OPG)の関与 PTHによって骨芽細胞に誘導されるRANKLが破骨細胞に作用するのをブロックするOPGの動態を検討したところ,腎機能の低下とともに上昇し,長期透析患者では正常の5倍に達した.骨組織との比較を行ったところ,OPG濃度は,ES/BSと有意な負の相関関係をしめし,同等のPTHレベルでも,OPGが高い方が骨吸収は低下していた.したがって,腎不全においてはOPGが蓄積するために,破骨細胞の活性化が低下している.
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