研究概要 |
1.酸化ストレスによる腹膜中皮細胞障害 腹膜中皮細胞に対する酸化ストレスの病的意義を、核酸の酸化ストレスマーカー8-hydroxy-deoxyguanine(8-OHdG)を使用して基礎的検討を行った。CAPD排液中の8-OHdGは腹膜の炎症、中皮細胞の傷害、腹膜硬化の臨床的マーカーとして有用性が示唆された。この酸化ストレスの原因である活性酸素の発生源を、培養系を用いた実験により明らかにした。高ブドウ糖濃度により培養腹膜中皮細胞の細胞小器官であるミトコンドリアから活性酸素が発生することが確認された。 2.腹膜血管の新生 腹膜の血管新生機序の基礎的情報を得る目的で、腹膜炎時における血管形成に関連する因子のプロフィールの解析を形態学的に行った。腹膜炎時、腹膜表層に多くの細胞浸潤が認められ、それらの細胞の一部はCD34陽性で、Flk-1、Flt-1、Tie-2も同時に陽性である細胞群が存在した。電子顕微鏡観察においても浸潤細胞から血管の新生像が認められ、腹膜炎時の血管新生に、腹膜への浸潤細胞とVEGFやAmgiopoietinの血管新生因子の関与が示された。 3.Klothoマウスの腹膜機能 ヒトの多彩な老化症状によく似た変異表現型を持つマウスから,原因遺伝子Klothoが同定された。老化による腹膜機能・形態変化をKlothoマウスで解析を行った。Klotho遺伝子欠損マウスの腹膜は,同種齢の野生型に比較して腹膜中皮細胞の微絨毛が少なく,活性酸素産生の亢進が認められた。また,毛細血管網の発達が悪く,腹膜炎モデルでは,修復機転が遅い傾向を示した。
|