研究概要 |
エストロゲンの多様性及び特異性をもたらす生理作用は,細胞内で結合するレセプター(ER)および共役因子群の厳密に制御された相互作用からもたらされると考えられ,これらの因子が時期及び組織特異的な下流応答遺伝子の空間的な転写・発現制御を行うことにより,生体内での劇的な生理作用を発揮する.女性ホルモンとして性分化,性機能の調節に必須であるのみならず,骨代謝,脳代謝,血管新生等における多彩な生体生理作用について,その分子メカニズムを解明することが本研究課題の目的である. 1)本研究において代表者および分担者の共同研究の成果として,エストロゲン下流応答遺伝子であるEfp(estrogen finger protein)が細胞増殖に必要で,実際にこの遺伝子を欠損したマウスでは子宮重量の減少が報告されているが,乳ガン細胞での増殖の促進にも,細胞周期の負の調節因子である14-3-3σのタンパク分解が介在していることを明らかにした(Nature,417:871-5,2002).本研究では,新しい細胞増殖のコンセプトを示し,抗ガン剤の新たな標的として,ガン治療への糸口がつかめた. 2)ERαとERβの活性型変異レセプターcaERαとcaERβ遺伝子を組み込んだコンディショナルトランスジェニック(cTg)マウスについて,それぞれついて数ラインづつcTgマウスの作製に成功した.また,ERαとβの下流応答遺伝子の同定及び生体高次機能の解析の観点から,DNAマイクロアレイを利用してエストロゲンの関連遺伝子として,ラット初代骨芽細胞から細胞周期制御因子として知られるサイクリンD2,D3がcdk4/6を介して骨芽細胞の増殖に関与していることを示した(Biochem. Biophys. Res. Commun,299:222-8,2002).
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