研究概要 |
[目的]セロトニンは単独では弱い血小板凝集を示すに過ぎないが、他の凝集惹起物質、薬剤による血小板凝集を相乗的に増強する作用を示すとされる。また、セロトニンは強力な血管収縮物質であり主要な血小板由来の血管収縮物質であると考えられている。また、血小板表面にはS2レセプターが存在し、セロトニンはこれを介して血小板凝集を活性化する。セロトニンは、血管内皮障害部位では血管平滑筋細胞膜上と血小板膜上に存在するS2レセプターに作用し血管収縮と血小板凝集を引き起こす。従って、セロトニンの局所の増加は虚血障害をより増悪すると考えられる。そこで、実験的肝部分温阻血再灌流モデルを用いて肝阻血再潅流障害におけるセロトニンの意義を明らかにすることを目的とした。 [対象と方法]8週令SD系雌性ラットを用い肝部分温阻血再灌流モデルを作成し、対照群(Sham)、30分阻血群(30I)、60分阻血群(60I)、90分阻血群(90I)の4郡に分類した。それぞれ選択的セロトニンS2レセプター拮抗剤(S2Ra)投与郡、非投与郡を設定し、再灌流後30,60,90,120分後に犠牲死させた。血清生化学検査(AST, ALT, LDH)、摘出肝におけるセロトニンの局在を検討するために抗セロトニンモノクロナール抗体を用いた免疫組織染色を施行した。 [結果]30I再潅流後30分のAST、ALT、LDH、60Iの再潅流後30分、60分、120分のAST値、30分、90分のALT値、および30分、90分、120分のLDH値、また90Iの60分後のAST、ALT値、120分後のLDH値が、S2Ra投与群で有意に低値であった。免疫組織学的検討では、90I再潅流後60分でセロトニンのグリソン氏鞘を中心とした出現を認めた。 [結語]肝阻血再潅流障害の発生および進展におけるセロトニンの関与が示唆された。
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