研究概要 |
(1)樹状細胞(DC)と癌細胞の融合に関する基礎的検討(平成13年度) マウス肺転移モデルを用い、融合細胞ワクチンの予防効果と治療効果を検討した。その結果、融合細胞ワクチンは、樹状細胞および腫瘍細胞単独投与に比べて、肺転移の有意な増殖抑制効果および治療効果を示した。 (2)ヒト由来細胞を用いたpreclinicalな検討(平成14年度) ヒトでの臨床応用を念頭にDCの作製方法、有効なmturationの誘導方法、有用なイムノモニタリング方法について検討した。その結果、DCのmturationには、サイトカインカクテル(GM-CSF,IL-4,IL-6,IL-1β,TNF-α)やOK-432が有用であることが示唆された。また、イムノモニタリング法として、Th1サイトカイン測定の有用性が確認された。 (3)融合細胞ワクチンの第I相臨床試験(平成15年度) 進行再発消化器癌を対象に第I相臨床試験を施行し,安全性、免疫応答および臨床効果について検討した。十分なインフォームドコンセントの後、文章による同意の得られた標準的治療法無効な進行再発消化器癌9例を対象とした。融合細胞ワクチンは、樹状細胞と放射線照射自己腫瘍細胞を用いてPEGとElectroporationで作製した。ワクチンは2週間隔で計4回鼠径リンパ節近傍に接種した。さらにワクチン接種前後の免疫反応(皮内テスト,Cytokine array, Elispot assay, Th1/Th2,Tc1/Tc2,CD4/CD8)および臨床効果を評価した。対象症例全例に重篤な有害事象は認められなかった。血液中のリウマチ因子および抗核抗体はいずれも低値で,自己免疫疾患の兆候は認められなかった。9例中6例でワクチン投与後tumor lysateに対する皮内反応が陽性に転じた。また9例中6例でTh1/Th2またはTc1/Tc2バランスの改善を認め,少なくともその内5例で血清IAP値の低下を認めた。臨床効果はSD 5例,PD 4例力あった。進行再発消化器癌に対する融合細胞療法の安全性が確認された。
|