研究概要 |
人工肛門における縫合糸は粘膜で自然脱落することから、皮膚よりも消化管にはマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)が多く存在する。今回、MMP阻害剤(BE16627B)ならびに免疫抑制剤(FK506)を用いて消化管吻合部におけるMMP活性と治癒過程を検討した。 雄性SDラット(270-290gBW)76匹を用いた。下行結腸を切離、1層内翻結節縫合を行った。BE16627B(万有製薬奥山より供与)は2.4mg/rat/dayを、FK506(藤沢薬品より供与)は0.01,0.1,1.0mg/kg/dayを浸透圧ポンプ(model 1003,Alza)にて背部皮下より投与した。対照群は溶媒のみ投与した。第4日目に吻合部破裂圧(mmHg)、コラーゲン(μg/mg wet tissue)を測定した。 MMP阻害剤では吻合部破裂圧(160±12vs125士7,Pく0.05)および可溶性コラーゲン(0.27±.01vs0.21±.01,p<0.01)はBE16627B群で高値であった.免疫抑制剤では血中FK506濃度(0.1,1.0mg群)は1.4,3.4ng/mlであった。FK506群で体重増加が抑制され、負の窒素バランスを示した。濃度依存性にMMP活性が抑制されたが、対照でも1.0mg群と同様に抑制された。吻合部破裂圧は対照(119±7)に比べ、FK群(0.01,0.1,1.0mg)で増加した(146±9,158±10,151±6,P<0.01). MMP活性の阻害により大腸吻合初期の破裂圧および可溶性コラーゲンは増加した。免疫抑制剤により体重増加や窒素バランスは抑制されたが、MMP活性も抑制され、吻合部治癒が促進された。今後、コラーゲン新生とMMP活性の両面から創傷治癒過程について検討していく必要がある。
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