研究概要 |
乳酸-グルコール酸共重合体生分解性高分子マイクロスフィアに免疫抑性剤タクロリムスを封入して、タクロリムス封入生分解性マイクロスフィア(以下、TLBMと略す)を調製した。これをラットに皮下投与して、徐放効果、組織内濃度の集積効果、免疫抑制効果を検討し、以下の4つの研究成果を得た。 1.TLBMは、平均粒子径が87-90μmの粉末状微少粒で、タクロリムス含有率は、2回の調整で、6.76%,6.48%と安定していた。 2.TLBMをDA/Slcラット背部に1回皮下投与し、タクロリムス含量1.6mg/kg,2.4mg/kg,7.2mg/kgの全血中タクロリムス濃度を経時的に測定したところ、14日間、統計学的に有意な平坦で平行な濃度曲線を維持し、投与量とAUCとに決定係数0.958の有意な回帰直線を認め、優れた徐放性を示した。また、7.2mg/kgのタクロリムス含量でも、副作用として体重減少、下痢症状を認めなかった。 3.TLBMをDA/Slcラツト背部にタクロリムス含量4.8mg/kgの1回皮下投与で、投与後10日目の組織内タクロリムス濃度分布をみた。両側前肢腋窩の所属リンパ節と両側大腿部骨髄が他臓器に比して有意に高い集積性を示した。 4.DA/Slcラットをドナー、LEW/Seaラットをレシピエントに、鎌田のカフ法による同所性全肝移植を行い、TLBMのタクロリムス含量4.8mg/kg,2.4mg/kg,0.16mg/kgを移値直後にそれぞれ1回皮下投与して生存日数を比較した。タクロリムス含量4.8mg/kg 1回皮下投与は他に比べて有意に生存日数の延長を認めた。 以上の結果より、TLBMは、安定した徐放効果と優れた局所免疫抑制効果を持つため、タクロリムスの新剤型薬として期待できる。
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