研究概要 |
ヌードマウスに同所移植(胃癌細胞を胃など)すると何らかの血管新生因子の発現が亢進し、これが血管新生を高め、転移や増殖活性につながることが知られている。今回、Vascular endothelial growth factor(VEGF)が亢進するKKLS胃癌株とBasic fibroblast growth factor(bFGF)が亢進するKM12sm大腸癌株(いずれも高率に肝転移を伴う)を対象に、それぞれの株に体し、抗VEGF抗体を同所移植後3週目より、100μgx2/w投与した。血管新生抑制能としての対照として、既に血管内皮細胞の増殖抑制による血管新生抑制能を報告したポリアミン阻害剤のDFMOを用いた。13週目にマウスをすべて屠殺し、転移の有無をみるとともに、抗VEGF抗体治療がなされたKKLSにおけるVEGF, bFGFの発現をmRNAレベルで解析した。その結果、13週目における肝転移の発生率は、対照群のDFMO投与群で、KKLS 3/10,KM12sm 2/10と同程度の抑制率であったが、抗VEGF抗体投与群では、VEGF依存性のKKLS 1/10に対し、KM12sm 7/10と大きな差が認められた。またVEGF抗体治療がなされたKKLS腫瘍のVEGF, bFGFのmRNAレベルに変化は認められなかった。以上より、抗VEGF抗体による治療は、VEGFの高発現の腫瘍を対象とすることが、重要と思われた。また本治療によりVEGF産生能に変化がないことから、長期間継続治療が可能であると考えられた。 また、転移再発予防実験として、血管新生の亢進が起こり、その後に肝転移を起こす既報のモデルを用い、血管新生の亢進前と更新前に抗VEGF抗体を投与したところ、前に阻害した群で有意に肝転移を抑制することが判明した。 以上より、抗VEGF抗体などの血管新生抑制剤は、VEGFが亢進する症例において、早い時期に継続治療することが最も効率的な投与になるものと考えられた。
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