研究概要 |
膵胆道癌のリンパ節転移に対する"個別化による過不足ないリンパ節郭清"を目指してsentinel node conceptの導入を行い、術中にパテントブルーを用いてリンパの流れを検索し、センチネルリンパ節(SLN)を同定した。さらにリンパ節微小転移の検索(サイトケラチン-19を利用)を行って過不足ない郭清範囲再考し、個々の症例の郭清範囲の決定方法を模索した。 膵頭部癌では、No.13がセンチネルリンパ節(SLN)で、そこから左腎静脈周囲の大動静脈間へ流入し広がっていくのが観察された。過去の症例のリンパ節転移状況も加味してNo.13のSLNの転移の有無でNo.16郭清の適応と範囲を決定すればよいと考えられ、SLN転移(-)なら16a2blintに限り、SLN転移(+)なら16a1a2b1のint, pre, lateroまで広げるべきと考えられた。 また胆嚢癌ではNo.12bcがSLNで、そこからNo.13a, No.8を経て左腎静脈周囲のNo.16a2b1intに入り拡がっていくのが観察され、No.12bcのSLNの転移の有無でNo.13a,8の郭清の適応を,さらにはNo.13a,8の転移の有無でNo.16郭清の適応と範囲を決定すればよいと考えらた。 しかしこの方法では神経系・リンパ系が豊富なSMA方向へのリンパ流を捉えることは困難であった。そこで膵頭部癌の進展経路となる上腸間膜動脈(SMA)周囲のリンパ系・神経系を、SMA・膵頭と一括切除する術式を開発し、現在までに11例に行っているが、この手術方法で切除されたSMAを含む膵頭部の完全全割標本を現在のところ6症例に作製し、膵癌がSMA周囲にどのような進展形式でいかに拡がるのかを病理組織学的に検索した。その結果SMA神経叢への神経浸潤を6例中4例に認め、うち3例において連続性にSMA中枢・末梢側へ、さらにはSMAを越えて左側にまで及び、SMA外膜に達していた。またSMA周囲リンパ節への転移は全例に認めたが、それらはIPDA分岐部より末梢側に多く存在し、腫瘍からSMA周囲に至るリンパ管内にも全例で癌細胞が認められた。神経浸潤・リンパ管侵襲・リンパ節転移と主要血管との関係を膵の発生学的見地からの検討を行った。さらに癌の占居部位が腹側膵領域である場合と背側膵領域である場合とでは進展方向が見なることが明らかとなりつつある。
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