研究概要 |
(食道癌について)術前未治療の食道表在癌手術切除症例43例の切除標本を用いて、リンパ節転移、リンパ管侵襲と生物学的悪性度に関わる分子マーカーの発現性との関連を検討した.cell cycle関連分子としてcyclin D1, Rb, p16,p27,PCNA、細胞間接着因子としてE-cadherin, α, β-cateninを免疫組織学的手法を用いて癌組織内での発現を調べた.深達度別にm1-2癌(A群):7例、m3-sm1癌(B群):9例、sm2-3癌(C群):27例の3群に分け、それぞれの分子の発現性とリンパ節転移との関連を検討した。cyclin D1は強発現を、またRb, p16,p27、E-cadherin, α, β-cateninは発現低下を異常発現とした。またPCNAは発現陽性細胞率で検討した。リンパ節転移はA群:0%、B群:11%、C群:33%で、またlyはA群:14%、B群:33%、C群:41%であった。接着分子の検討では3分子のいずれかひとつ以上の分子に異常発現がみられた割合は、A群20%、B群60%、C群84%と深達度と共に増加したが、リンパ節転移との関連は認められなかった。cell cycle関連分子のうちで発現性がリンパ節転移と相関が認められたのは、cyclin D1のみであり、cyclin D1の強発現症例20例中8例がn(+)で、弱発現23例中2例がn(+)であった(p<0.05)。一方、lyとの関連ではly(-)の28例中26例がn(-)でly(+)の15例中8例がn(+)であった(p<0.01)。EMR後の切除標本でlyの検索とCyclinD1の発現性の検討よりリンパ節転移の予測の可能性が示唆された。 (大腸癌について)大腸sm癌123病変の臨床病理学的因子からリンパ節転移危険因子を検討した。深達度細分類は粘膜筋板からの垂直方向距離でsm1(~500μm), sm2(500~1000μm), sm3(1000μm~)とした。リンパ節転移率はsm1(0%), sm2(2.0%), sm3(7.5%)でリンパ節転移の症例の最浅浸潤距離は1200μmであった。リンパ節転移危険因子は1200μm以上の浸潤または脈管浸潤陽性、先進部の蔟出・高異型化のいずれかの因子であった。現在MMP7,MMP9,S100,Rho, cadherin, catenin, KI-67,apotosis markerなどの分子生物学的マーカーを検討し,病理学的診断との比較を検討中である。
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