研究概要 |
虚血耐性(Ischemic Preconditioning)(以下IP)は,1986年,Murryらによって初めて報告されたもので,それは心筋の短時間の虚血が,それに引き続く長時間の虚血によって生じる心筋梗塞巣を縮小させる効果があるというものであった。さらにこの効果は心筋以外にも,脳,肝臓などでも確かめられている。そしてその効果時間に関しては,動物,臓器,細胞によって異なり,また有効期間内につぎの虚血が行われなければこの効果は誘導されないことも判明している。しかしその発生機序や制御機構については未だ解明されていない部分が多い。本研究では前初期遺伝子群であるc-fos, c-junのmRNAおよびアポトーシスを検討し、IPの効果の誘導・制御機構を解析することを目的とし、平成13年度では40分間の虚血時間に対する10分間のIPの効果を検討した。 【実験方法】Wistar系雄性ラットを用い、10分間のIPと10分間の再灌流を加えるIP群と非IP群に分け、両群のラットに対して、肝の左門脈および左肝動脈を血管クリップで40分間血流遮断した後、再灌流するモデルを作製した。そして両群の、ALT、組織壊死率、PCNA LI、湿性肝重量について比較検討した。 【結果】再灌流6時間後のALTは、IP群で有意に低下していた(P<0.05)。再灌流24時間後の組織壊死率は、巣状壊死を認め、IP群で有意に低下していた(非IP群:21±9%,IP群:9±6%,P<0.05)。再灌流24時間後のPCNA LIは、IP群で有意な低下を認めた(非IP群:4.6±1.4%,IP群:1.4±0.4%,P<0.05)。再灌流3日後の虚血葉重量では差を認めなかった。
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