研究概要 |
現在,肉眼的治癒切除後の大腸癌症例に対する補助療法は5-フルオロウラシルおよびロイコボリンを用いる化学療法が主体で適応は病期IIIの症例,すなわちリンパ節転移陽性例とするのが標準的である.しかし,この適応決定方法では,潜在性の転移が存在しない症例に対して不必要な化学療法が行われる一方,リンパ節転移がなくとも潜在性血行性転移が存在する症例に対して化学療法が行われない問題点がある. 大腸癌術後再発危険因子評価を行う目的で,550種類の遺伝子の発現の解析が可能なcDNAマクロアレイを用いて,大腸癌患者における遺伝子発現を解析した. 対象は,(1)治癒切除をうけ,術後5年間再発が認められなかった大腸癌症例の原発巣(2)肝転移を合併した大腸癌症例の原発巣とした. (1)と(2)を比較することにより,大腸癌の術後肝転移再発と関連した遺伝子発現の変化を見出すことができた.肝転移群で発現が増加した遺伝子が9種類,低下した遺伝子が22種類同定された.この結果より,手術時に肝転移の危険度を約80%の確率で予知することが可能であった.
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