研究概要 |
癌細胞からのIL-8産生量は,活性化血小板と共培養すると単独で培養されたときよりも有意に増加し,Northern blot analysisによりIL-8 mRNAの腫瘍細胞における発現も血小板の存在により有意に増強していた.さらに,血小板はchemoinvasion assayより膵癌細胞の浸潤能を促進していることが認められ,Gesatin zymographyおよびWestern blot analysisによりMMP-9の発現が血小板により増強されていることがわかった.これらのMMP-9産生増強作用は抗血小板剤の投与により有意に抑制された.また,血小板の腫瘍血管新生における生理的役割をヒト腺癌細胞株を用いてin vitroにおける血管内皮細胞3次元培養による管腔形成により評価したところ,コラーゲンゲルとHUVECのみを用いた場合の管腔形成を100%とすると,血小板と腫瘍細胞との共培養後の上清を加えると,血管管腔形成はいずれの腫瘍細胞でも著しく促進され,増加率は54〜80%に達した.血小板内には元々VEGFが存在し,腫瘍細胞自身もVEGFを産生しているが,血小板と腫瘍細胞との共培養によりVEGF産生量は相乗的に増加した.血小板は可溶性因子を放出し,さらに直接接着することにより,腫瘍細胞と相互作用を行い,腫瘍細胞の血管新生を促進している可能性が示された.その理由として腫瘍細胞からのVEGF産生とIL-8産生が血小板により増強されたことが一因と考えられた.
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