研究概要 |
モルモットにcarrageenanを経口的に投与し,胆摘を施行することによって,胆汁うったい性肝障害を伴う疑似潰瘍性大腸炎が誘発されたが,肝内細胆管障害の程度は様々であり,このモデルでアポリポ蛋白等の投与効果を検証することは断念した. その代わりに,Wistarラットに中等量(1mg/kg),および半致死量(5mg/kg)のエンドトキシンを投与し,アポリポ蛋白A1の投与効果をエンドトキシン投与に引き続く炎症性サイトカイン(TNFalpha)の血中濃度,および生存率をend resultとして検討した.エンドトキシン1mg/kgを腹腔内投与した20匹のラットを,投与1時間後にアポリポ蛋白A1(10mg/kg)を投与した群とコントロールとしてTBSを投与した群とに2分割し,エンドトキシン投与2時間後のTNFalpha濃度を比較,検討した.また,エンドトキシン5mg/kgを投与した20匹のラットでは,同様にアポリポ蛋白A1を投与した群と対象群との間で生存率を比較した. エンドトキシン投与2時間後のTNFalphaの平均血清濃度は対象群で4,461pg/mLであったが,アポリポ蛋白A1投与群では1,463pg/mLと有意に抑制された.半致死量のエンドトキシンを投与したラットでは,対象群では2日以内にすべてのラットが死亡したが,アポリポ蛋白A1を投与したラットでは10匹中9匹がエンドトキシシ投与5日以上生存した.アポリポ蛋白A1は高比重リポ蛋白(HDL)の主成分であるが,HDLはエンドトキシンとマクロファージ上のCD14受容体を競合し,エンドトキシンの毒性を軽減するといわれている. 今回の検討の結果は,HDLのなかでもアポリボ蛋白A1がエンドトキシンの解毒に重要な役割を果たしていることを間接的に証明し,重症感染症において,治療の目的でのアポリボ蛋白A1投与の可能性をを示唆するものである.
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