研究概要 |
ペプチドワクチン療法を2000年10月より開始した。 大腸癌術後に再発し病理組織で腺癌と診断されている.HLA-A24陽性またはHLA-A2陽性で5FUとLeucovorinの投与でprogressive diseaseと判断され、前治療中止後,少なくとも4週間以上の間隔がある.重篤な合併疾患がない.文書によるインフォームドコンセントが得られた症例を対象とした. 投与ペプチドは14種類のHLA-A24結合ペプチドおよび12種類のHLA-A2結合ペプチドのうち患者末梢血リンパ球(T細胞)と反応を有することが確認されたペプチドの中で、4種類までのペプチドを選択した。投与方法は不完全フロインドアジュバンドとの各エマルジョン化ペプチド溶液として大腿部の皮下組織内に別々に注射し、2週間に1回投与した. Grade3以上の有害事象が認められた症例やProgressive Diseaseと判断された場合は中止した.さらに2週毎にワクチン3回投与後、ワクチン4回投与後より併用療法として前治療の投与量の1/2から1/3の投与量の5FU(750mg)とLeucovorin(250mg)を毎週点滴静注した. 14例中6例に腫瘍マーカーの低下、14例中3例に腫瘍サイズの縮小(PR2例,MR1例)が認められた.末梢血リンパ球中のキラーT細胞前駆体頻度の増加は全例に認められ、14例中7例に血清中にIgG抗体が存在することが確認された.有害事象は投与部位の発赤、腫脹のみであった.平均生存期間は10.8ヶ月、14例中8例は6ヶ月以上、そのうち2例は1年以上,2例は2年以上生存している。 1.進行癌に対する治療ワクチンとして,より早期に特異的CTLを誘導するために患者自身のCTL precursorに基づくワクチンの選択投与を行った. 2.ペプチドワクチンと抗癌剤(5FU+LV)による併用療法において,特異免疫能の測定・解析を行った結果,特異免疫能を保持したままで抗癌剤投与が可能であり,症例によっては抗腫瘍効果が得られた. 3.CTL誘導/増強や抗ペプチド抗体が早期から認められた症例に抗腫瘍作用を伴うことが多かった.これらより,CTL及び抗体の両者が抗腫瘍性に作動することが示唆された.
|