研究概要 |
【自的】組織因子(tissue factor 以下 TF)は外因系凝固反応を起こす重要な因子であるが,様々な癌細胞で高発現していることが明らかになり,凝固反応と独立して血管新生や浸潤など癌転移に関連した活性を有することが明らかになってきた。またTFは戦求の血管内浸潤に関連することが最近明らかにされた.しかし癌転移における役割は十分に検討されていない.今回我々は肺癌腫瘍組織のTF発現量を定量PCR法で測定して臨床病理学的因子と比較検討し,転移におけるTFの役割に関して新知見を得たので報告する.【方法】術前にインフォームドコンセントの得られた肺癌患者42例の原発腫瘍からRNAを抽出して,リアルタイムPCR(ライトサイクラー)を用いてRT-PCR法により原発腫瘍内のTFのmRNA,とGAPDHのmRNA量を測定した.TF発現量はGAPDH発現量との比であらわした.その結果を臨床病理学的因子と統計学的に解析した.2群間の有意差検定はunpaired T testを用いた.相関関係の検定はspermanの順位相関を用いた.それぞれp<0.05を有意差有りとした.【結果】v(+)群のTF発現量(3.73E-4±1.96E-4,n=17)は,v(-)群のTF発現量(1.45E-4±0.87E-4,n=25)と比較して有意に高値を示した(P=0:0211).一方組織型,性,ly因子,n因子,p因子や病理病期ではTF発現量に有意差を認めなかった.また腫瘍最大径とTF発現量の間にも相関関係を認めなかった.【結論】肺癌腫瘍組織のTFは癌細胞の血管内浸潤に関連すると推察された.
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