研究概要 |
癌の悪性化のうち最も大きな変化は転移能の獲得であり,肺癌は肺,脳,骨,肝に臓器特異性を持つ.この臓器特異性の解明にはまず転移モデルが必要であるが,ヒト肺癌細胞の転移モデルは確立されていない.そこで我々はまずモデルの作製より着手した. ヒト肺小細胞癌H-69をマウス尾静脈より注入,わずかに生じた肺及び肝転移巣より再度細胞株を作成し再びマウス尾静脈より注入.この操作を繰り返すことによりH-69の肺及び肝高転移亜株を作成した.今後この肺,肝高転移亜株を用いて両者の遺伝子変異の相違点をDNAチツプにより明らかにしていく予定である. 一方,遠隔臓器への着床にはその最初のステップである血管内皮細胞との接着が最も重要であろうという予測のもとに,あらかじめ蛍光物質でラベルしておいた肺動脈由来血管内皮細胞及び肝類洞由来血管内皮細胞にH69を接着させ,セルソーターで両者を分離,回収し再度培養,この操作を数回繰り返しそれぞれの血管内皮細胞に選択的に接着する細胞株を作成中である.このようにして得られた細胞株を上述したマウス肺,肝転移モデルと比較する予定である. さらに血管内皮細胞は均一なものではなく臓器ごとに特徴を持つことが予想され,その分化誘導を担っているのは細胞外マトリックスであると考えられる.各臓器に特徴的な血管内皮細胞の特に接着因子の相違点と細胞外マトリックスの果たす役割についてもあわせて解析していく予定である.
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