研究概要 |
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)では強い引っ張り強度,引き裂き強度,生体内劣化の少なさのためにインプラント材として優れたバイオマテリアルである.しかし,PTFEには細胞接着性の低さに起因する優れた抗血栓性がある一方で,低い組織反応や遅い創傷治癒反応が起きてしまい大きな欠点となる.そこで,我々は,PTFEの表面改質にプラズマ処理技術を応用することで理想的な表面に改質できることを発見した.この表面改質PTFEが生体反応に及ぼす効果の有効性をin vivoで評価することとした.【方法】2種類の異なる条件をもつ構造の表面処理を,医療用ePTFEノート上に作製する.微細羽毛状構造の高さは3μmに固定し,そのピッチを0,2,3μmの範囲で未処理〜粗面の3種類の異なる表面処理条件で作製する.Wister rat(n=6)の背部皮下2箇所に同種のサンプルを局麻下に埋植し,それぞれを衷面未処理ePTFE群と表面中等度処理化ePTFE群と表面高度処理化ePTFE群し,経時的に急性期炎症反応(IL-1β,TNF-α,C3a),病理組織学的検討(好中球,リンパ球,Mφ,巨細胞)及び反応性被膜の評価を行った.基本統計量はmean±SDで示し,統計処理はFischer's PLSDを行い危険率p<0.05を有意とした. 【結果】各群で血液学的急性期炎症反応は全て測定限界値以下で両者に有意差は認めなかった.病理組織学的検査においても明らかな有意差は認められなかった.反応性被膜の測定では,未処理群262.6±55.4μm,密群312.1±62.6μm,粗群は301.1±60.7μm(n=12)で各群間に有意差は認めなかった.【総括】羽毛状PTFEの羽毛の粗群,密群にラット埋植後の生体反応の差(創傷治癒反応)及び細胞進入の差は認められなかった.今後更に細胞侵入,創傷治癒の改良のため表面処理条件の検討を続けていく.
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