研究概要 |
本研究では,ラットの大脳皮質内にヘモグロビン溶液(Hb-S)を注入することにより外傷性てんかんモデルラットを作成して活性酸素種消去剤が発作脳波出現などを予防できるか否かを検討した.また,けいれん発作で発生するラジカル種に付いて詳細な検討を行い下記の成果をあげた. 1.カイニン酸が誘発するけいれん発作中には海馬でアスコルビン酸ラジカル(・VC)が増加することを初めて見いだすとともに,ラジカル種消去能を持つ抗てんかん薬のゾニサミド(ZNS)はカイニン酸誘発けいれん発作を抑制すると共に・VCの増加をも抑制することを見いだした. 2.特異性が高く,経済的な・VCの新定量法を開発した. 3.ラット大脳皮質内にHb-Sを注入すると,約3日後から脳波には陽性の多棘波が出現し,棘波活動に同期して口周の触毛にtwitchingが観察された. 4.Hb-S注入後ZNS含有飼料で2ヶ月間飼育したラットの飼料の摂取率は有意に少なく,また発作脳波活動出現率に変化は認められなかった. 5.Hb-S注入後メラトニン含有水で3ヶ月間飼育したラットの発作脳波活動出現率に変化は認められなかった.また,一過性に体重が減少したラット群があった. 以上のごとく,カイニン酸誘発けいれん中には脳内でラジカル種の発生が増加することを直接証明するとともに,・VCの新しい定量法を確立した.一方,Hb-S注入外傷性てんかんモデルを使用し,ラジカル消去剤のけいれん発作焦点形成予防効果を検討したが,予期せぬ一過性の体重減少や飼料摂取量の問題などが発生し,確実な結果は得られなかった.しかし,ラジカル種は頭部外傷のみならず,脳内血腫や脳梗塞時などでも脳浮腫などの形成に関与している.このため,本研究は外傷性てんかん発症予防の道を示すばかりでなく,脳内血腫などで起こる脳浮腫の予防や治療を考える上にも重要である.
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