研究概要 |
我々はこれまでに,HAI-1およびHAI-2を強制発現させた神経膠腫培養細胞株ではフィブリン分解能が抑制されており,神経膠腫細胞が有するプラスミン活性をHAI-1およびHAI-2が抑制することでその浸潤能を弱める可能性を見い出し,matrigel invasion assayにてHAI-1およびHAI-2ともに神経膠腫培養細胞の浸潤能を抑制することを見い出した。その後,ヌードマウス脳内に神経膠腫細胞(mock, HAI-1強制発現,HAI-2強制発現)を移植し,形成される脳内腫瘍を組織学的に比較することで,神経膠腫細胞におけるHAI-1およびHAI-2の腫瘍浸潤・増殖能に対する影響を検討した。In vivoでは,HAI-1によって神経膠腫細胞の腫瘍浸潤・増殖能は抑制されるが,HAI-2によってはむしろ増強された。 これらから,HGFAはHGFと相まって腫瘍浸潤・増殖能に促進的に関わり,その阻害物質であるHAI-1およびHAI-2によって拮抗された。HAI-1およびHAI-2の生理活性は,in vitroつまり神経膠腫由来の培養細胞においてはその腫瘍浸潤・増殖能を抑制すると言える。しかし,生体内ではHAI-2でむしろ腫瘍浸潤・増殖能を増強されたことから,生体内においてHAI-2遺伝子はプラスミン活性に促進的に作用するというまったく新たな機能を有することが示唆された。今後,このHAI-2遺伝子をターゲットとした新しい腫瘍制御療法の開発に臨みたいと考えている。
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