研究概要 |
TRAILとDNA損傷型抗癌剤治療により相乗的細胞死がglioma細胞に誘導されたことから,細胞内のdeath signalに関与する分子経路について検討した.ヒトglioma細胞ではdeath receptorのadaptor分子の一つであるFADDの発現が認められ,dominant-negative FADDを細胞に導入すると,TRAIL/抗癌剤併用治療による殺細胞効果は有意に抑制された.FADDとともにdeath receptorとDISCを形成するinitiator caspaseであるcaspase-8は,この併用療法で切断され,活性化が誘導された.更にeffector caspaseであるcaspase-3も切断・活性化され,その結果caspase-3のsubstrateの一つであるPARPの切断も誘導されたことからFADDを介する直接的caspase活性化経路の関与が示唆された.またBIDの切断及びミトコンドリアからのcytochrome c及びAIF (apoptosis-inducing factor)の細胞室内への放出が増強され,ミトコンドリア傷害を介するcaspaseの活性化及びAIFを介する直接的アポトーシスの実行経路も関与することが示唆された.また,glioma治療に標準的に使用され,DNA損傷を誘発する放射線治療とTRAILの併用治療によっても,同様に相乗的殺細胞効果が認められた.X線照射10GyによりTRAIL receptorのDR5蛋白発現が誘導され,TRAIL-DR5結合を中和するDR5Fcの添加により併用効果は抑制されたことから,X線照射によるDR5発現誘導が併用効果に重要であることが示された.FADD/Caspase-8を介する直接的経路と,ミトコンドリアを介する経路などの複数の細胞内細胞死経路が活性化された.p53が野生型でTRAIL/X線照射の併用治療に耐性を示したU87細胞にp53のdominant negative DDを導入した細胞を樹立したが,本治療への感受性化は認められず,p53機能は本併用療法感受性に関与しないことが示唆された.ヒト正常astrocyteへの併用治療効果は認められなかった.アポトーシスに関与する転写因子NF-kB機能は,TRAIL或いはTRAIL/DNA損傷型抗癌剤治療に対しては明らかな関与は認められなかった.
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