研究概要 |
1.方法 実験動物として雌成熟日本白色家兎を以下の4群に分けた。Group1の右膝蓋腱に対しては,in situ凍結解凍処理により膝蓋腱の内在性細胞を死滅させた後,nylon製filterにて膝蓋腱を2重に包むwrapping処理にて,周囲組織からの外在性細胞の侵入を抑止した。Group2の右膝蓋腱に対しては,凍結解凍処理した膝蓋腱の内外側を切除し,残りの膝蓋腱の断面積を切除前の67%にして膝蓋腱の応力を増加させた後にwrapping処理を施行した。Group3に対しては,wrapping処理のみを施行した。Group4に対しては,膝蓋腱断面積を67%にした後にwrapping処理を施行した.全動物とも術後6週に力学的特性と組織学的観察を行った。 2.結果 1)Group1および2の腱実質内には細胞は認めず,Group2では腱のコラーゲン線維配列は不規則化が顕著であった.Group4では細胞が増加したが,コラーゲン線維の配列は正常対照との間に明らかな差を認めなかった。Group3の膝蓋腱は正常膝蓋腱との間に差異を認めなかった。 2)引張強度および弾性率に関しては,Group2はGroup1に比し有意に低値を示したのに対し,Group3とGroup4の間に有意の差を認めなかった。 3.考察 本研究では,細胞が存在しない膝蓋腱に対し応力を増加させると,膝蓋腱の弾性係数および引張強度は生理的応力を維持した膝蓋腱に比し有意に低下し,コラーゲン線維の不規則な配列をもたらした。これは本研究の条件下での過負荷は細胞外マトリックスの微細損傷をもたらし,膝蓋腱の力学特性を低下させたと考えられる。一方,線維芽細胞が存在する膝蓋腱では力学的劣化を認めなかった。これは,腱線維芽細胞は前述の過負荷による細胞外マトリックスの力学特性の低下を防止することを示していると考えられた。
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