研究概要 |
血管新生は滑膜増生とともに慢性関節リウマチ(RA)の主たる病変であり、血管形成阻害剤を使用することで滑膜増生をも抑制することから、RA治療の戦略の一つとして認識されている。血管新生に関与する因子は近年多数同定されてきたが、そのなかでリガンドであるアンギオポイエチン-1、-2(Ang-1,2)とそのレセプターであるTie-2は血管新生に必須であることが明らかにされている。そして我々はTie-2,Tie-1レセプターがRAの増生滑膜の新生血管のみならず、滑膜上皮や間質にも強く発現していることを確認した(Uchida et al.2000. Ann Rheum Dis,607-614)。そしてTie-1とTie-2滑膜上皮や間質における発現様式は異なっており、Tie-1がびまん性に染色されるのに対し、Tie-2はビメンチン陽性細胞でなく、CD68陽性細胞と非常によく共発現することが判明した。我々はこの結果にもとづき、本研究課題ではTie-2レセプターのリガンドであるAng-1,Ang-2の発現を免疫染色、in situ hybridization法で検出し、培養滑膜細胞に対する生理活性を検討した。Ang-1,Ang-2はともにTie-2の発現部位に一致して強く発現した。Ang-1,Ang-2は培養滑膜細胞の細胞移動能や細胞形態変化等には影響を及ぼさなかったが、DNA合成に対して濃度依存性に抑制的に作用した(投稿準備中)。またchemotaxisアッセイでは両方のAngともchemotaxisを促進した。以上のことから、Ang-1,Ang-2とTie-2系はRA滑膜の細胞増殖にオートクリン・パラクリン的に作用していることが示唆された。そしてAng-1,Ang-2とも滑膜細胞のchemotaxisを制御することで、滑膜増殖に関与していることが判明した。
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