研究概要 |
我々はこれまで椎間板の変性に伴う髄核細胞のTGF-βやBMPの発現の変化を免疫組織学的に観察してきた。このTGF-βの発現の変化は細胞のアポトーシスに関連した所見である可能性がある。そこで本研究ではアポトーシスの観点から老化の機序を分子生物学的に解明することを目的として研究を行った。実験は老化の過程を短期間に観察できる実用的な実験動物モデルとして老化促進マウス(senescence-accelerated mouse ; SAM-P/6)を使用した。前年度は生後週令4週、8週、12週、16週、20週、24週、28週、32週、50週の雄の老化促進マウスの頚椎椎間板を摘出し、頚椎椎間板髄核細胞のTGF-β1,β2,β3とその受容体の発現を免疫組織学的に観察した。その結果髄核細胞におけるTGF-β1,β2,β3とその受容体の発現は週令が進むにつれて減弱し、50週ではほとんど発現が認められなくなり髄核細胞の数も減少した。そこで本年度はこの髄核細胞の減少がアポトーシスによることを証明する目的で実験を行った。髄核細胞は老化促進マウス生後32週からすでにTUNEL法による染色で陽性となりcaspase活性もみられアポトーシスが生じていることが示唆された。また電子顕微鏡的にみた核の形態学的変化においてもアポトーシスに一致した所見が確認できた。このアポトーシスの所見は生後50週では更に著明となった。15年度は椎間板の変性過程におけるアポトーシスの細胞内シグナル伝達経路解明を目的としてASK1,JNK, p38をABC法にて免疫組織学的に観察した。椎間板の変性にともない髄核細胞にASK1,JNK, p38の発現が確認されたが対照群にも発現が認められアポトーシスに関連した細胞内シグナル伝達経路を解明するには至らなかった。
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