研究概要 |
【目的】軟骨肉腫の悪性度を判定するには組織学的所見のみでは困難なことがある。軟骨肉腫の悪性度におけるmatrix metalloproteinase(MMP)-2, -3, -7, -9, -13, a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motif(ADAMTS)-4, -5, tissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP)-1, -2, -3,の発現を調べ、組織学的悪性度や予後との関連性を検討した。 【対象と方法】軟骨肉腫28例と正常軟骨5例を対象とし、各因子の抗体を用いて免疫染色を行った。軟骨肉腫はO neal, Ackermanの分類に準じて組織学的gradeをI-IIIに分類した。免疫染色の結果は0から4段階にスコア化し評価した。 【結果】軟骨肉腫においてMMP-2, -3, -7, -9, -13, ADAMTS-4, -5, TIMP-1, -2, -3が発現していた。MMP, ADAM, TIMPの免疫染色のスコアとgradeの間には、5%水準でMMP-2, -3, -7, -13, ADAMTS-4, -5, TIMP-1, -2, -3において正の相関を認め、1%水準でMMP-2, -3, -13, ADAMTS-4, -5, TIMP-1, -2, -3において正の相関を認めた。またMMP, ADAM, TIMPは、一方が上昇すると他方も上昇するというように、互いに協調して発現していた。軟膏肉腫症例のうち広範切除を行い、再発のない15例の予後を検討したが、これらの症例では予後と免疫染色のスコアの間に相関関係は認めなかった。 【結語】用いた各因子は軟骨肉腫においてすべて発現が認められ、組織学的悪性度と免疫染色のスコアは、MMP-9以外はすべて5%水準で有意の相関を認めたことより、これら因子の発現は軟骨肉腫における悪性度の指標の1つになりうる可能性が示唆された。しかし、転移、予後との関連性は認められなかった。
|