研究概要 |
従来、変形性関節症(osteoarthritis : OA)の原因は、老化あるいは力学的ストレスによるものとされていたが、近年、新たな分子メカニズムが提唱されつつある。以前の基盤研究(課題11671461)において、われわれは、OAの病態に免疫応答の関与することを報告したが、本研究では、さらに発展させ、以下のような結果を得た。 1.OA関節における炎症反応の存在:OA軟骨細胞に補体レセプターであるC5aRが発現していた。さらに軟骨細胞からはケモカイン(MCP-1,MIP-1,RANTES)が産生され、またそれらのレセプターであるCCR2,CCR5が発現していることを示した。RANTES, MCP-1は、軟骨細胞からのMMP-3産生を促進し、プロテオグリカン産生を抑制することを示し、これらケモカインが軟骨の異化を促進することを明らかにした。 2.関節炎惹起性の証明:上述した蛋白質のうち、YKL-39,CILPについては、実際マウスを免疫することにより、慢性で少数関節に発症する関節炎が発症した。滑膜炎や軟骨の破顔も組織学的に確認できたが、CILP関節炎については、靭帯骨化や異所性骨化などの骨病変もみられ、興味深い。 3.軟骨破壊を進行させるパンヌス様組織の存在:OA軟骨組織の詳細な観察により、軟骨表面を覆うパンヌス様組織の存在が見出され、これら組織から産生されるサイトカインや蛋白分解酵素によって軟骨破壊が促進されることが示唆された。 4.軟骨細胞とT細胞の相互作用:OAでは、軟骨細胞と自己T細胞が接触することにより、T細胞が活性化するだけでなく、軟骨細胞からも蛋白分解酵素やケモカインが産生された。
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