研究概要 |
日本白色ウサギを対象として,静脈路を確保後,ペントバルビタールの静脈内投与で麻酔を維持し,終末呼気炭酸ガス分圧を35〜40mmHgに維持するように酸素加空気にて調節呼吸を行う。腎動脈分岐部直下において大動脈周囲にクランプ用カテーテルを設置する。脳脊髄軟膜血管を直接観察するために,頭頂部に有窓(closed window)を作製し,全身状態を安定させた後,baselineの諸量(脳細動脈径,血圧,心拍数,血液ガス,血漿電解質濃度)を測定する。腎動脈分岐部直下において大動脈遮断を20分間行った後,遮断解除して再灌流を行い,大動脈遮断直後,大動脈遮断20分後,遮断解除0,2,5,15,30,60分後に脳血管径の変化を測定した。 脳細動脈は大動脈遮断においては明らかな変化を示さないが,大動脈遮断解除後一過性に拡張した後,遮断5分後から脳細動脈は収縮し遮断解除後60分においても有意な脳血管収縮を示すが,トロンボキサンA_2受容体拮抗薬のセラトロダストおよびフリーラジカルスカベンジャーであるエダラボンは遮断解除後の脳血管収縮を減弱させ,この脳血管収縮の機序に少なくとも一部トロンボキサンA_2受容体とフリーラジカルが関与していることが解明された。さらに,大動脈遮断・解除に際して周術期に使用される各種血管作動薬(ミルリノン,コルホルシンダルパート,プロスタグランジンE_1)の投与を行い遮断解除後の脳血管収縮に与える影響を検討した結果ミルリノンとコルホルシンの臨床濃度の静脈内投与(0.5μg/kg/min)によって5分後からみられる脳血管の持続的な収縮は完全に拮抗するが,プロスタグランディンE_1は臨床濃度(0.1μg/kg/min)で投与しても脳血管の反応には全く影響を与えず,使用する血管作動薬の種類によって大動脈遮断・解除に伴う脳微小循環に与える影響が修飾を受けることが明らかになった。
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