研究概要 |
大理石病op/opマウスを用いて慢性疼痛と神経原性骨関節病変の発生のメカニズムを解明するために,まず標準マウスに5.0カットグート3カ所の坐骨神経緩結紮を行い熱刺激装置による疼痛反応潜時の測定を行った.その結果8週間にわたって有意なDifference Scoreの低下が認められた.またvon Frey hairを用いた触刺激による逃避反応回数は坐骨神経緩結紮後3週間にわたり有意に患側で上昇していた.破骨細胞は患側で増加傾向が認められた.このことから,標準マウスでニューロパシックペインと骨関節病変が生じる傾向が確認できた.次に,ヘテロまたはホモマウスを対照として,op/opマウスと対照マウスに坐骨神経緩結紮を行い熱刺激装置による疼痛反応潜時の測定を行った.その結果op/opマウスでも熱過敏性が生じる傾向が認められ,マクロファージコロニー刺激因子を欠損し,マクロファージの誘導ができないop/opマウスでも,神経損傷後に熱に対する過敏性が生じることが判明した.一方,神経原性の骨病変を検討するために,正常ラットと坐骨神経緩結紮ラットで坐骨神経領域の知覚神経,交感神経の脛骨への分布を免疫組織化学的に検討した.その結果,正常ラットと坐骨神経緩結紮ラットの両者でこれらの神経分布様式に差はなく,骨端部二次骨化中心,骨幹部骨膜にCGRP(calcitonin gene related peptide), GAP(growth associated protein)-43, NPY(neuropeptide-Y), DBH(dopamine beta hydroxylase)が分布していることが判明した.これらのことは,骨には知覚神経と交感神経が骨代謝に密接に関与しており,坐骨神経緩結紮によって生じる神経原性骨病変が生じるとすれば,骨端部二次骨化中心,骨幹部骨膜付近の骨変化が大きいことを示唆している.
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