研究概要 |
テブレノン(geranylgeranylacetone : GGA)前投与が先行虚血(ischemic preconditioning : IP)と同様に虚血再灌流後の心筋保護作用を示すか,また揮発性麻酔薬との相互作用をウサギ虚血心モデルを用いて検討した。Evans blue注入,1%triphenyltetrazolium chloride染色により梗塞/梗塞危険領域比等を測定した。乳頭筋レベル左室短軸像の後方散乱エコーの心周期変動から心筋組織性状を解析した。 【平成13年度】GGA群は前処置として実験12時間前および開始直後に1mg/kg静脈内投与した。IP群は左冠動脈鈍縁枝の"5分間閉塞・15分間再灌流"を2サイクル行った。梗塞/梗塞危険領域比はコントロール群(n=7)59.2±18.3%,IP群(n=8)31.3±9.1%,GGA群(n=6)36.6±17.9%とコントロール群に比較してIP群およびGGA群において有意に低かった。後方散乱エコーの心周期変動は冠動脈閉塞後に各群で有意に低下したが,群間には有意差を認めなかった。 【平成14年度】GGA群は前処置として実験24時間前にGGA 10mg/kgを静脈内投与した。GGA+SEV群はGGA前処置後,左冠動脈閉塞60分前から30分間セボフルラン0.5MACを吸入させた。GGA+5HD群はGGA前処置後,冠動脈閉塞30分前にミトコンドリアK_<ATP>チャネル阻害薬(sodium 5-hydroxydecanoate 5mg/kg)を静脈内投与した。梗塞/梗塞危険領域比はGGA群(n=8)38.5±9.9%,GGA+SEV群(n=8)26.9±19.7%,GGA+5HD群(n=8)55.2±13.7%,Vehicle群(n=7)59.2±9.4%とVehicle群,GGA+5HD群に比較してGGA群およびGGA+SEV群において有意に低かった。後方散乱エコーの心周期変動には有意差を認めなかった。 GGA前投与は先行虚血と同様に心筋保護作用を生じ,その保護作用はセボフルランにより増強された。またこの心筋保護作用にはミトコンドリアK_<ATP>チャネルが関与することが示唆された。
|