研究概要 |
1.脊髄くも膜下腔微小透析用カテーテルの特性 微小透析用カテーテルをラット脊髄くも膜下腔に留置し,脊髄遊離アミノ酸を留置後1,3,5,7日に測定した。経日的にアミノ酸濃度の低下を示したが,ばらつきは小さく安定した数値を示し,カテーテルを一週間にわたり使用できることが分かった。 2.モルヒネの投与方法による耐性発現の違い 浸透圧ポンプを用いたモルヒネ脊髄くも膜下持続投与による鎮痛効果は持続投与開始後24時間で最も強く,その後緩徐に減弱した。全身投与(持続皮下投与)では2時間で鎮痛効果はピークとなり,その後急速に減弱し容易に耐性を生じた。くも膜下投与でも1時間毎7回の間歇投与では1回目投与後最大の鎮痛効果を示しその後急速に耐性を生じた。脊髄くも膜下腔微小透析法による脊髄遊離アミノ酸測定では間歇投与6時間でアミノ酸は上昇傾向を示し,特にグルタミン酸で顕著だった。グルタミン酸受容体の耐性への関与が示唆された。 3.ナロキソン強制退薬にみる依存性発現 モルヒネのくも膜下投与時よりも全身投与時にナロキソン投与後の退薬症状(allodynia, teeth chatteringなど)は強く発現し,身体的依存発現に上位中枢の関与が示唆された。ナロキソン投与前後のアミノ酸変動は,モルヒネ持続くも膜下投与では特異な変動はなかったが,モルヒネ持続皮下投与では測定した全てのアミノ酸が一様に低下した。このアミノ酸変動とallodyniaなど身体症状との関係については今後検討する必要がある。 なお今回の研究ではアデノシンの測定値は個体差が大きく,一定の傾向は得られなかった。
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